皆様、益々のご清栄と存じ上げます。平素は何かとお世話になり誠に有難うございます。
東京労音(旧東京勤労者音楽協議会)は、2023年11月を持ちまして、創立70周年を迎える事となります。半世紀を遥かに越える、長期にわたり、活動を続ける事が出来ました事に大変喜びを感じております。これも一重に、長く東京労音に関わってご指導、ご協力を頂きました、皆様方のおかげと、心より感謝申し上げます。

創立期の1953年当時は、長い戦争による影響が残り、人々の生活はすべての面で貧しく、苦闘の時代でした。「音楽会」は、一部の富裕層のもので、一般の勤労者にとり高嶺の花でした。会員制の「東京労音」の発足により、勤労者、市民に、邦人演奏家による生の音楽会や、オペラ、バレエ等が身近なものとなり、大きな支持を受け、数年の内に会員が増大していきました。その後の経過の中で、当時、国交のなかった中国、旧ソ連邦、東ヨーロッパの国々と、音楽交流が発展し、国際的な音楽交流も生まれていきました。1960年代には国際的に広がっていた、「ベトナム戦争反対」「ベトナム人民支援」運動の中で、全国労音と共同して、ベトナムにピアノ15 台や、レコード製作機械、劇場への音響機材などを送る運動を広げました。

1970年代以後、多くの音楽事務所、プロダクション、音楽ホールなどが出来、音楽が商業的に成り立つ時代になり、東京は、世界有数の音楽都市へと発展しました。東京労音の活動がその礎となり、営利企業でなく、市民、勤労者に支えられた音楽鑑賞組織として、世界に類の無い形で70年の歴史を築いた事に誇りを感じています。

コロナ感染症の蔓延により、2020年度は、僅か10回の演奏会しか開催できず、組織的、財政的に大きな痛手を受けています。様々な内部努力や工夫により、2023年度は、コロナ前の実績に70%まで迫る回復を勝ち取りました。この数年、東京労音は、首都圏を中心に、年間200回程のコンサート活動を開催しています。70年の時間を経て、社会や、人々の生活、音楽の形態など大きく変わりました。しかし、生の音楽を愛し、生の音楽を求める人々は、年齢の幅を超えて、存在します。ここに私たち東京労音が、これからも存続・発展する役割がある事を確信しています。

 東京労音は70周年を迎える中で、皆様方のご支援、ご協力に、感謝しながら引き続き、音楽愛好者の皆様、音楽業界の企業の皆様、音楽家の皆様、公立文化施設の皆様、各種団体の皆様と一層固く結びつき、多くの人々の求める、多様な音楽文化の、普及・発展のため活動してゆきます。今後の皆様方の御力添えを変わりなく頂戴いただけますようお願いして、70周年を迎える、東京労音からのご挨拶とさせて頂きます。


2023年10月吉日
東京労音 委員長 篠崎 政治
事務局長 小林 哲雄